宗教ではない仏教 ビジネス縁起観 浪 宏友事務所

 


 


 


 


 


 


 

 

市民サークル 夕焼けクラブ

 

FIDR/公益財団法人国際開発救援財団

ビジネスエッセイ 人材育成 −その2−

 

人材確保

 

 古くから「ヒト・モノ・カネ」は、事業の3資源と呼ばれてきました。これらを調達してはたらきを発揮させ、目的を達成するのが経営者の仕事であるわけです。

 “ヒト”という資源は、経営者自身から末端社員まで、さらにはパート、アルバイトまでを含めた会社に所属するすべての人々のことです。“ヒト”は人材と言われます。“材”とは役立つものということですから“資源”と同じ意味です。

 人材確保の基本的な課題は、採用・定着・育成です。どれをとっても一筋縄ではいかないことばかりで、この問題で悩んでいない経営者を探す方が難しいくらいです。

 こうした問題に対して、経営者はどう対処しているかをある研究機関が調査しましたところ、事実上何もしていない経営者が一番多く、半数以上だったそうです。こんな話を聞きますと、もったいないなあと思います。

 出来の悪い社員を前にしてため息をついても道は開けません。社員も普通の人間ですから、良いところもあれば悪いところもあります。良いところを出させ、悪いところを出させないようにすることができれば、出来の良い社員になります。良いところを出させないで、悪いところを出させていたら、出来の悪い社員になります。

 たいていの社員は、対処のしかたで良い社員にすることができます。基本的には、社員の良いところを発見し、これを生かそう、伸ばそうとアプローチすればいいのです。磨けばそれぞれに光るのです。

 他社の社員をうらやむよりも、他社からうらやまれる社員を育てたいものだと思います。それは決して不可能なことではないのです。

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人材育成の方法

 

 人材育成をしたいけれど、どうやればいいんだろう。あの会社は人育てがうまくいってるらしいが、どんなことをしているんだろう。人材育成というと、やはり「どうやればいいのか」と、方法を求めたくなります。

 人材育成の方法は三つあるとされています。業務の中で教育するOJT、業務から離れて教育するOff-JT、本人が自発的に学習する自己啓発の三つです。状況に応じて適切な方法を用いるわけです。

 この社員にはこの仕事を担当させたいから、こういうスキルを身につけさせよう。そのためには、この先輩社員を教育係にして、OJTで仕込んでいこう。

 社員全員に知っておいてもらいたいことがある。仕事を早じまいして、会議室でOff-JTしよう。

 この社員がこの資格を取ってくれたら、こっちの仕事を任せられる。しかし、そのために業務の時間を割くことはできない。残業を少なくしたり、報奨金を用意したりして、自己啓発を勧めよう。

 このように、教育対象者、教育内容、教育方法は、一体のものとして考えることになるわけです。

 人材育成の目的は、会社に役立つ社員に育て上げることです。そのためには、人材育成のプランを立てる必要があります。現在役立つ社員ばかりでなく、将来も役立つ社員を育てたいと思うなら、経営の見通しを立て、その上で人材育成の計画を立てることになります。

 人材育成は「ヒト」という経営資源を作りだすための投資です。経理上は教育訓練費など経費の項目になるためにうっかりしがちですが、本来は設備投資以上の投資であることを忘れてはならないと思います。

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人材育成法は千差万別

 

 人材育成の方法といえば、理論的には、Off-JT、OJT、社外研修、自己啓発などになると思います。しかしその具体的なやりかたは千差万別です。

 ある会社では、教育する先輩と教育される後輩がペアになって、つきっきりで教育が行われています。

 ある会社では、教育される新人社員に対して、周りの先輩たちが寄ってたかって仕事を教え込みます。

 ある会社では、直接の上司が社員に仕事の説明をしたら、そのままほおっておきます。その後は、定期的に様子を見に来ては意見交換をし、またほおっておきます。

 教育の方法がこんなに違うのは、会社ごとにそれぞれの条件が異なるからです。会社の目指すもの、仕事の内容、企業文化、社長の考え方、先輩社員の資質、そして教育を受ける社員の資質などの違いによって、教育方法が変わってくるのです。

 向こうの会社で人材育成に成功した例がある。あの方法を使えばうちでも上手くいくんじゃないか。そう思う気持ちは分かりますけれども、やはり、やめた方がいいと申し上げなければなりません。他社で成功した方法は他社の持つ条件の中で成功したのであり、条件の異なる自分の会社に当てはまることは滅多にないからです。

 ある新入社員に使った方法がうまくいったから、これからの新入社員は全部これでいこう。そういう考え方にもちょっと待ったと言わなければなりません。資質の異なる社員に同じ方法が使えるとは限らないからです。

 社員教育はそれぞれが特別です。会社の教育目標、社員の資質、教育担当者の資質などによって、ひとつひとつ工夫してこそ、真の効果を得ることができるのです。

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人材がいなくなる

 

 ある会社の営業部に営業成績が抜群の人がいました。この人は、営業はこうやるもんだという信念を持っていました。それはそれでよかったのだと思います。

 この人が営業部長になりました。すると、それなりの営業成績を上げていた営業部員が次々に退社しはじめました。わけを聞きますと、営業部長が自分の指示通りにやれと押し付けてくるというのです。自分には自分のやり方がある。自分を否定されてまで、この会社で働きたくない。そう言って転職していきました。残った営業部員は、部長の指示通りに動いていました。

 そんな中で、営業部長が倒れてしまいました。営業部長の指示通りに動いていた営業部員たちは、指示がもらえなくなって、どうしていいか分からなくなりました。この会社は急速に傾いていきました。

 この営業部長から見ると、自分の思い通り、指示通りに動く社員が良い社員であり、指示通りに動かない社員は悪い社員だったのです。このため、自分の指示通りに動く社員を作りましたが、自分で考え、自分で工夫する社員は育てませんでした。それどころか、育っている社員を追い出してしまいました。

 社長はこの事態に気づかなかったのでしょうか。気づいても対処しなかったのでしょうか。営業部長のやりかたに賛同していたのでしょうか。いずれにしても、会社が傾くという大きな代償を払うこととなりました。

 人材に対する考え方を誤ると、取り返しのつかないことになります。その修復には多大なエネルギーを費やさなければならず、時には修復不能になることもあります。重々、留意すべきであると思います。

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教育担当者

 

 ある会社で、素質のよさそうな高校新卒を採用することができました。社長は大切に育てたいと思い、年輩のベテラン社員に教育を任せました。

 ところが、ベテラン社員は、仕事を教えることはせずに、自分の仕事の手伝いをさせたり、使い走りに使ったり、あたかも子分ができたような感じでした。

 社長は、これではいけないと思いましたが、相手はベテラン社員です、うかつに口出しできません。そうこうしているうちに新入社員は退社してしまいました。

 社長は、この人は仕事ができるから、教えることもできるだろうと考えたのですが、そうではありませんでした。仕事を教えるスキル、人を育てるスキルは、仕事のスキルとは別だったのです。

 ベテラン社員に若い社員を預けっぱなしにしたことにも問題がありました。

 中小企業の強みの一つは社長と社員の距離が近いことです。社員全員が社長と言葉を交わし、社長の熱意に触れながら、仕事ができることです。この利点を生かして、人材育成の体制を考えてもいいのではないでしょうか。

 知識・技術・技能の習得のための指導は、直接の上司や先輩が行なうことが多いと思います。そのすぐ後ろに社長がいて、教育に当たっている上司や先輩と話し合い、育成の状況を把握して、必要な時には自ら乗り出す。中小企業だからこそ、こういうことも可能になります。

 教育をする社員も、教育を受ける社員も、社長の熱意を肌身に感じるとき、モチベーションが高まり、取り組みにも心がこもるに違いありません。ここから、会社を愛する社員が育つのではないかと思います。

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なにが原因なのか

 

 社員が思うように働いてくれない。困ったことだと思います。こんなとき、困った、困ったと見ているだけでは埒があきません。

 社員が困った姿になったのには、必ず原因があります。原因は、社員の側にもあります。経営の側にもあります。両方の原因を明らかにして対処することで、この問題を解決するという取り組みが求められます。

 採用の仕方はどうだったでしょうか。スキルや資質を確かめてから採用したでしょうか。とにかく人が欲しいからと、我が社に合わない人を採用してしまわなかったでしょうか。

 教育に問題はなかったでしょうか。必要な知識・技術・技能を教えないまま、訓練しないままに、仕事に就けたりしなかったでしょうか。

 規律はどうだったでしょうか。ルール違反を見つけても、辞められては困るからと、見て見ぬふりをしてこなかったでしょうか。

 支援はできていたでしょうか。社員が困って相談にきたときに面倒くさそうに応対しなかったでしょうか。忙しいから明日にしろなどと追いかえし、そのまま忘れてしまったりしなかったでしょうか。

 そんなことをした覚えはない。そう思ったとしても、現実に社員が思うように働いてくれないとしたら、必ずどこかに原因があるはずです。

 原因を突き止めるのは生易しいことではありません。しかし、原因を突き止めなければ問題解決はできません。社員の側にある原因と経営側にある原因を見つけて、適切に対処する必要があります。

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人的資源

 

 資源とは、人間の生活や産業などの活動のために利用できるものを言います。人間が生活や産業に活かして使えるものはすべて資源です。同じものが資源になったり資源でなくなったりします。役立て方を知っている人には資源になるけれど、役立て方を知らない人には資源にならない。そういうこともあり得ます。

 経営資源とは経営を行なうときに利用できるものということになります。なかでも欠かせない資源として「ヒト、モノ、カネ」が上げられています。これらの資源を活かして使いながら、事業を推進するのです。

 

 

 人も、活かして使えば人的資源となりますが、活かすことが出来なければ人的資源になりません。活かし方が小さければ小さな人的資源となり、大きく活かせれば大きな人的資源になるわけです。

 これまで目立たなかった人が、上司が変わったら活き活きと活動するようになったという事例があります。小さな人的資源から大きな人的資源に様変わりしたのです。

 逆に大きな働きをしていた人が、上司が変わったら働きが悪くなったという例もあります。このように人は大きな資源になったり、小さな資源になったりする性質があります。従業員を大きな人的資源に育てるか、小さい人的資源のままで放置するかは、企業の中心的課題のひとつでありましょう。

 

 

 人的資源を大きくするには、ハードスキル(業務に特有の専門性の高いスキル)を向上させる必要があります。それに加えて、ソフトスキル(あらゆる業務に役立つ普遍性の高いスキル)を高めれば、より大きな人的資源となることにも、留意したいと思います。

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人材で差別化

 

 中小企業は大企業と価格競争をしてはいけないと言われています。とても太刀打ちできないからです。

 そうなると、大企業にはできないもの、他社ではやらないものを掘り起こして商品化するしかありません。ここしかやっていないもの、ここでしかできないものなら、ここに発注するほかないからです。

 ところが製品も、サービスも、ビジネスモデルも、売り出すそばから模倣されます。また、消費者のニーズ・ウォンツの回転が速くて、開発した商品はたちまち陳腐化していきます。常に新しいものを生み出していかなければ生き続けることができません。

 

 

 それならば、常に新しいものを生み出していく力を備えればいいのです。世の中が新しいものを望み始めたら、すぐに対応すればいいのです。

 新しいものを生み出す力を持っているのは人です。顧客の新しいニーズ・ウォンツを掴んでくる営業。これを製品やサービスに具体化する設計。設計を形にする現場。これを魅力的に売り込む営業、宣伝。これらをバックアップする管理部門。

 世の中が望むものを生み出そうという気概を持った人材を育て、チームワークを構築すればいいのです。

 製品の模倣はできても、人材の模倣はできません。

 生産的に活動する人は、日々成長しますから、陳腐化することはありません。

 社長が、熱い思いで語りかけ、社員の力を引き出し、チームワークを育て、他社との間に人材の差別化を図っていただきたい。そこを目指して人材育成に取り組んでいただきたい。心から、そう願ってやみません。

 

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人材育成という仕事

 

 

 業績向上の決め手は、人材にあるといっても過言ではありますまい。

 そんなことは分かっていると、だれもがおしゃるだろうと思います。それにもかかわらず、人材の育成なんか俺の仕事じゃないなどとそっぽを向く経営者も少なくありません。そして言うのです。あっちの会社には良い社員が揃っているのに、俺の所の社員はカスばっかりだ。

 ある著名な指揮者が「世の中に下手なオーケストラは存在しない。下手な指揮者がいるだけである」と言ったそうですが、この言葉は会社にも当てはまりそうです。

 どの会社の社員も資質はほとんど同じです。その資質を引き出して業績に結び付ける経営者と、資質を引き出さないあるいは引き出せない経営者がいるだけなのです。

 あいつは入社してから3年も経つのに、ちっとも仕事ができないと嘆いている経営者がいましたが、これは、雇ってから3年も経つのに、仕事ができるように育てていないということなのです。

 

 

 経営者にとっても、管理職にとっても、まず行わなければならない仕事は人材育成であると気付いた会社が、そちこちに生まれはじめているのは嬉しい話です。

 それどころか、一般社員の立場でも、先輩が後輩を育てることや、自分自身を育てることは、業績向上のために欠かすことのできない仕事であると気付かなければなりません。

 パナソニックの創業者松下幸之助は「松下電器(パナソニックの以前の社名)は人をつくる会社です。あわせて電気製品を作っています」と言ったそうです。

 この姿勢が企業を大きく育てたことを見過ごしてはならないと思います。

 

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人材育成とコミュニケーション

 

 

 ある先輩社員が、入社して間もない後輩社員に、仕事を教えることになりました。

 一通り説明を受けた後輩が仕事をしていると、先輩がやってきて「こんなんじゃだめだ」と怒鳴りつけ、そのまま行ってしまいました。後輩は慌てて仕事をやり直しました。また、先輩がやってきて「こんなんじゃだめだと言っただろう」と怒鳴りました。後輩はどうしたらいいのか分からず、固まってしまいました。

 ここでは先輩が怒鳴っているだけです。後輩はウロウロするだけです。この状態が数日続いたら、後輩は出勤できなくなるかもしれません。

 先輩が、だめだと怒鳴っても、後輩は、何がだめなのかさっぱり分かりません。先輩は必要な知識を持っていますが、後輩は持っていません。これは知識の共有がないという状態です。

 後輩が先輩と同じ知識を持つためには、コミュニケーションが必要です。コミュニケーションは会話から始まります。会話は言葉のキャッチボールで進展します。先輩が教え、後輩が返事をする。後輩が質問し、先輩が答える。こうしたやり取りを重ねて、後輩が必要な知識を受け取り、理解し、自分のものにするのです。このようにして知識の共有ができたとき、コミュニケーションが成り立ったと言えます。

 この事例では、先輩と後輩の間にコミュニケーションが成立していません。これを繰り返していては、いつまでたっても、後輩は育たないでしょう。

 後輩社員を戦力として育てるには、コミュニケーションの手間を惜しむべきではないと思います。

 

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後継者育成

 

 

 高齢となった経営者が、事業を誰かに継承したいと思うけれども、適当な人が見当たらないという話をよく聞きます。いわゆる中小企業の後継者問題です。なぜ、こんなことが起きるのでしょうか。

 昔から、経営トップの第一の仕事は、後継者づくりであると言われてきました。なぜ、後継者を作らなければならないのでしょうか。それは、事業を継続することが求められているからです。

 せっかく作った会社だから、つぶしたくないということもありますが、この会社を当てにしている顧客やステークホルダーが大勢いるから、安易につぶすわけにはいかないというほうが、本質的な理由です。

 事業は株主のもの、経営者のものという一面がありますが、同時に社会のものであり、利用する人々のものであるという一面もあるのです。

 組織における職階は、大きく四つに分けることが出来ると思います。経営・管理・監督・現業の四つです。それぞれの職階には、それぞれ求められるスキルがあります。経営者には、経営者としての専門性の高いスキルが求められます。

 経営の後継者は経営者としてのスキルを具えている必要があります。そのためには、必要なスキルの学習を進め、現実の場で訓練を受けて身につけるというプロセスを踏むのが順当でしょう。事業継承とは、株を渡すこと、経営者の地位を引き継ぐことである以前に、経営者としての資質を育成することであると、私は考えています。

 手遅れにならないうちに、後継者の育成を考え始めることをお勧めしたいと思います。

 

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トップという人材

 

 経営の3要素は、ヒト・モノ・カネと言われます。ヒトとは経営トップから末端従業員まで、さらにはパート・アルバイトまで、この会社に所属する人すべてを指します。すなわち、経営トップも人材にほかなりません。 「企業は人なり」と言われますが、この場合の“人”から、自分を外す経営者に会ったことがあります。本当は、もっとも重要な“人”こそ経営者本人であることに気づくべきだと思います。その意味で、人材育成のひとつとして、経営者自身の育成、すなわち自己啓発が考えられていいと思います。

 昔から慢心が戒められています。慢心から生じた言動から、周囲の人びとの心を失うことがあります。

 慢心があると、自己啓発の努力を忘れ、それ以上の成長は望めません。成長が止まった人は、不思議なことに、人間的魅力が失われます。謙虚な気持ちで学び続け、成長を続けている人は、まだまだ未熟であったとしても、活き活きとした魅力が感じられます。

 自ら学び続けている経営者は、従業員の育成でも先頭に立つに違いありません。学びを辞めてしまった経営者は従業員を育成するという意識すら持てなくなっているかもしれません。

 ある老教育者が教えてくれました。

 従業員は一人一人違いますから、それぞれに合った育て方をしなければなりません。それぞれの従業員と共に成長する。そうした取り組みが、経営者自身を成長させてくれるのです、と。

 育てようとする従業員が教科書だという指摘には、長い経験にもとづく、強い響きが感じられました。

 

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