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経営理念の浸透

経営理念の浸透

  

経営理念の浸透とは

 「経営理念の浸透」とは、「経営理念が組織メンバーに共有されること」を意味している。

 経営者の本心から発した経営理念が、組織メンバーに共有され、言動に現われることによって、顧客・社会との調和を生む。経営理念は、組織メンバーに共有されることが必要である。それゆえ、経営理念の浸透に関して、次のような課題が生じるであろう。

  • より多くの組織メンバーが共有する。
  • より正しく共有する。
  • より深く共有する。

 経営トップは、これらの課題にたいして、適切な方策を立案・実行しなければならない。

  

浸透の対象

 組織メンバーとは、経営トップから末端メンバーまで、この組織の一員として活動するすべての人を言う。そして、すべての組織メンバーに、経営理念に沿った言動が求められる。

 接客など顧客と直接接触する人も、製造など顧客と間接的に接触する人も、直接的にも間接的にも顧客との接触がない人も、この組織のメンバーであるからには、この組織の経営理念を共有することが求められる。

 組織における職階は大きく四つに分けて考えることができる。経営・管理・監督・現業の四つである。どの階層にあろうとも、経営理念を共有することが求められるが、職階が上であるほど、経営理念に合った考えかた、話しのしかた行動のしかたが、より求められるのは当然のことである。

  

経営理念浸透の効果

 経営理念の浸透が進めば、少なくとも次の成果が現われる。

 経営理念は経営トップの本心に発したものである。経営理念を共有する組織メンバーは、経営トップの考えや思いに通じる考えや思いを持ち、経営トップと同じベクトルで行動するであろう。組織全体が、同じ理念に貫かれれば、勝れたチームワークが期待できる。あとは、運営次第である。

 経営理念の浸透は、人的な経営基盤の確立のために、必要であると考えられる。

侵透しやすい経営理念

  

浸透しやすい内容

 経営理念の浸透を促進するには、浸透しやすい内容であることが求められるであろう。

 まず、経営理念は、人間性・公共性・普遍性を備え、現実性を備えているべきである。これらを備えた経営理念は、多くの人びとから理解されやすく、共感されやすい。そのため、組織メンバーにも浸透しやすく、顧客や社会とも調和しやすくなる。

 次に経営理念は個性を持つべきである。経営理念は経営トップの本心をおおもととしているはずだから、その意味で個性的になるはずである。個性は魅力の源泉となるから、その意味でも大切にしたい。人間性・公共性・普遍性と個性が調和しているならば、なおのこと心に響きやすく、浸透しやすくなるであろう。

 経営理念は、事業推進の土台となりながら組織メンバーの人生の基礎となっていなければならない。事業目的と個人目的が調和している経営理念は、組織メンバーから支持を得やすいであろう。

 これら三つの事柄については、検討の価値があると思われる。

  

浸透しやすい表現

 経営理念は、深い内容が簡潔な言葉で表現されていることが多い。

 同じ言葉でも、人によって受け取り方が異なり、解釈が異なることがある。人は、自分の経験・知識・人生観などによって、言葉を自分なりに受け取り、自分なりに解釈するからである。

 経営理念は、受け取る側が受け取りやすく、正しく理解しやすい表現であることが肝要である。表現のしかたによっては、内容が誤解されたり、曲解を招くこともあるからである。

  

経営理念のベクトル

 本人は経営理念を受け取り、現実化しているつもりでいても、ベクトルに問題がある場合がある。

 「ベクトル」という言葉には「空間における大きさと向きを持ったもの」と言う意味がある。その意味を踏まえて日常用語では、志向性・方向性という意味で使われることがある。ここでも、判断や行動の方向性という意味で使うこととする。

 経営者の本心を基盤に策定されている経営理念は、経営者の本心のベクトルを持つ。組織メンバーは、経営理念を、経営者の本心のベクトルと同じベクトルで持つことが求められる。

 しかしながら、まったく同じベクトルを持つことは難しい。人によってベクトルが異なることは避けられない。異なっていたとしても、ほぼ同じ方向であり、許容範囲内であれば問題ないであろう。

 問題になるのは、許容範囲を超えてベクトルが大きく異なる場合である。この場合は、経営の足を引っ張る恐れすらある。

 経営理念の浸透に際しては、ベクトルを揃えることも課題の一つとなる。

浸透を深めるには

  

浸透の最高レベルと最低レベル

 個々の組織メンバーにおける経営理念浸透の深さについて考えてみよう。

 経営理念は経営者の本心から発したものである。経営理念が組織メンバーの本心になって、経営者と通じ合っている状態が、最高レベルの浸透であると言ってよいであろう。これを「本心レベル」の浸透としておく。

 これに対して、経営理念を聞いたことがあるけれども、関心を持つこともなく、覚えてもいない段階は最低レベルの浸透であると考えてよいだろう。要するにまったく浸透していない段階である。これを「無関心レベル」としておく。

 本心レベルと無関心レベルの間に、数段階の浸透レベルを考えることができる。これは浸透の深さのレベルであると言える。

  

浸透の深さ

 組織メンバーにおける経営理念の浸透の深さについて、おおよその目安をとして、七つのレベルを考えてみた。

無関心レベル
経営理念を聞いたことがあるが、関心がなく覚えてもいない。
暗 記レベル
経営理念を覚えているし、言うこともできる。しかし、意味を理解していない。
理 解レベル
経営理念の意味が分かっているつもりだが、人に説明することはできない。
説 明レベル
経営理念の意味を理解していて、人に説明することができるが、仕事に現実化することはしていない。
他 律レベル
経営理念を理解し仕事に現実化する努力をしているが、言われたからしているという姿勢で、他律的である。
自 律レベル
経営理念を理解し得心し感銘を覚えて、モチベーションが高まり、自律的に仕事に現実化する努力をしている。
本 心レベル
経営理念が本心となり、現実化の努力をすることが当たり前になっている。

  

心と身体の働き

 人間の心の働きには、知・情・意の三つの要素があると考えられている。「知」とは知性であり認識したり考えたりする知的な作用である。「情」とは感情・情動である。「意」とは意志である。

 「知」の働きにより判断が行なわれ、計画がなされる。「情」の働きにより意欲が高まったり、動機づけがなされたりする。「意」の働きにより決断される。決断されたことが身体の働きにより言葉や行動に実践される。

 経営理念も、知の働きによって理解し得心する。情の働きによって感銘して動機づけられる。意の働きにより意欲が生まれ決断がなされる。そして身体の働きによって言動の実践となるのである。

 経営理念の浸透においても、知(理解・得心)、情(感銘・動機づけ)、意(意欲・決断)から実践(言葉・行動)に移されるのである。従って、経営理念の浸透のためには、知・情・意・実践のすべての要素に働きかける方策が必要となる。

  

知・情・意・実践と浸透レベル

 経営理念を聞いても、自分とは関係ないと思えば、無関心レベルになるであろう。知・情・意が反応しないのである。

 経営理念を教えられたので暗記したけれど、内容を理解することもなく、経営理念が自分と関係があることにも気付かないようなときには、暗記レベルに留まりやすい。

 経営理念の解説を聞き、内容も一通り理解したけれど、さすが社長は良いことを言うなどと感心するばかりで自分のこととして受け取らないときや、経営理念を現実化することが組織と自分にどのような利益をもたらすのかを理解できず、実感もしていないときなどは、理解レベル・説明レベルに留まりやすい。

 無関心レベル・暗記レベル・理解レベル・説明レベルは、知・情が反応しているけれども不十分であり、意に至らないために経営理念の現実化ができない。

 経営理念を理解し、得心し、現実化を促されて、義務的、他律的に業務で実践するのが他律レベルである。経営理念がモチベーションを高めているわけではないので、なんらかの障害があると実践を止めてしまう恐れがある。

 経営理念を受け取り、理解し、得心し、感銘を受けることによって、自発的・自律的にに現実化している状態が自律レベルである。

 理解・得心・感銘を突き抜けて、自分の本心となったときが本心レベルである。知・情・意・実践が、ひとつに溶け合っている。

経営理念浸透の課題

  

浸透レベルを引き上げる

 経営理念浸透のレベルで、無関心レベルの人は、経営理念を覚えようともせず、理解しようと思うこともない。

 暗記レベル、理解レベル、説明レベルは、経営理念を共有していないレベルである。共有していないから、現実化しようとしないのである。

 他律レベルは、現実化の努力はするけれども、まだ、言われたからやるというレベルである。本当の意味で共有しているとは言えない。しかし、共有の方向に向かっている可能性はあるであろう。

 自律レベルは、経営理念を共有している段階である。共有しているから、自らの意思で経営理念を現実化しようと努力する。

 本心レベルは、真に共有している状態である。

 経営理念に無関心であったり、関心があり理解もしながら共有しなかったりするのには、各人ごとに理由があるであろう。これらの理由を解決して、無関心レベル・暗記レベル・理解レベル・説明レベルを他律レベルへ、そして、自律レベルへと引き上げることが、経営理念浸透における大きな課題となるであろう。

  

内容とベクトルの課題

 組織メンバーが経営理念を共有したように見えても、経営理念の内容を誤解したり曲解したりしていては何にもならない。

 また、経営トップのベクトルから大きく外れたベクトルを持ってしまっては、事業経営に混乱を招いたりしかねない。

 経営理念の内容が正しく浸透し、ベクトルが経営トップのベクトルに合うように浸透することが、やはり、経営理念浸透における大きな課題となる。

経営理念浸透の方策

  

トップが率先して経営理念を実行する

 経営理念を組織メンバーに浸透するもっとも効果的な方策は、トップが自ら経営理念を実行することである。トップが経営理念に合った意思決定を行ない、経営理念に合った経営行動、管理行動を行なうのである。

 トップは組織メンバーの手本となるべき立場である。経営理念に合った姿を見せることで、手本を示すことになる。トップの経営理念に合った姿を見た組織メンバーは、仮に経営理念に対する認識が浅くても、経営理念に合った行動を取る気持ちになるであろう。これを後ろ姿で導くと言う。

 その上で、経営理念に合った管理を行なえば、組織メンバーへの浸透が深まることであろう。

  

トップから末端への流れを作る

 組織メンバーを放置しておけば、各々自分の考え、自分の思いで行動するであろう。このため、経営トップは自ら手本となって経営理念に合った行動を見せるのである。しかし、これだけでは十分ではない。経営トップから経営陣へ、管理職へ、監督職へそして現業者へと、経営理念の流れを作る必要がある。

 トップから末端へ向かう経営理念の流れができて、組織メンバー全員が経営理念に合った判断、行動が行なえるようになれば、組織全体が一つとなって目的に向かうことができるであろう。

  

研修を繰り返す

 トップから末端への経営理念の流れを作るためにも経営理念の研修が必要となる。

 研修を通して経営理念の理解を深める。理解ができたら業務の現場での実行を促す。実行した組織メンバーに対して、さらにレベルアップした研修をほどこす。より深く理解できたら、より高度な実践を促す。このように、研修と実践をくり返し、スパイラルアップすることで、経営理念の浸透はより正しく、より深くなる。

 経営理念の研修は、さまざまな機会をとらえて行うことができる。新規雇用者に対する研修を行なう。各職場ごとに業務に即した研修を行なう。各階層ごとに、階層に相応しい内容で研修を行なう。小さな会社では、トップから末端メンバーまでが一堂に会して、経営理念の確認を行う。このような繰り返しが、経営理念の浸透に大きな効果を生むであろう。

  

OJTを活用する

 経営の推進、業務の推進の場面で、経営理念に合った判断・行動を取ることができるようにすることが、経営理念浸透のためには不可欠である。その意味で、経営理念は、OJTによってより具体的、より本質的に行うことができると思われる。

 意思決定に迷ったら、経営理念に立ちかえる。方策・方法に迷ったら、経営理念を思い返す。問題に遭遇したら、経営理念を参照しながら解決に当たる。そのように部下や後輩を指導する。こうすることによって、より早く、より深く、経営理念の浸透がなされるにちがいない。

  

評価に反映する

 経営理念に合った働き方をしている人を高く評価することは、組織メンバーに経営理念の重要性の認知を促すであろう。

 経営理念に合った働きをした組織メンバーに、それでよいと指摘して方向づけをする。いつも経営理念に合った働きをしている組織メンバーに対してこれを褒め、これからも期待できることを認めて、給与に反映する。そうした方法が考えられる。

 このように評価するのは、経営理念に合うことが、組織にとって重要なことなのだと認識するとともに、自分にとっても意義あることなのだと認識させるためである。そのようにして、経営理念に合うように努力しようという気持ちに導くのである。

 その場限りの評価に終わることなく、未来に向かっての流れを作ることを忘れてはならない。

  

朝礼での唱和

 朝礼とか、会議などで、経営理念を唱和するというようなことが行なわれている。これによって、組織メンバーが経営理念を記憶し、忘れないようにすることができる。

 しかし、これだけでは真の意味での浸透はできない。記憶は浸透の第一歩であって、ここから奥に入らなければ、経営理念の働きは生み出せないからである。

経営理念の浸透と組織文化

  

組織文化

 事業組織の中で、組織メンバーのものの見かた、考えかた、判断のしかた、行動のしかたなどに共通の傾向がみられることがある。このようなとき、組織文化があるという。

 組織文化が組織に根付いているときは、その組織のメンバーの多くが、組織文化に沿ったものの見かた、考えかた、判断のしかた、行動のしかたをする。組織メンバーの誰かがその傾向から外れたときには、他の組織メンバーから違和感をもたれる。

 組織文化には、善い組織文化もあれば、悪い組織文化もある。悪い組織文化を打破して、善い組織文化を形成するという取り組みがなされた例もある。

  

経営理念と組織文化

 経営トップの本心に発した経営理念が成文化・公表されて、組織メンバーへの浸透が深まると、そこに組織文化が育まれてくる。組織メンバーのものの見かた、考えかた、判断のしかた、行動のしかたが、経営理念に合っているのが当たり前になってくるわけである。

 このような組織に新しいメンバーが加わると、組織文化に同化されて、経営理念に合った考え方や行動のしかたをするようになってくる。このため、短い間に経営理念が深く浸透し、ベクトルも揃ってくる可能性が高い。

 経営理念に沿った組織文化が深まっていくことは、経営トップにとっても、組織にとっても、組織メンバーにとっても、喜ばしいことであると考えられるであろう。

  

組織文化の危険性

 組織文化が深まることは喜ばしいことであるけれども、反面、いくつかの危険性を孕んでいることにも目を向けておく必要がある。

 危険性のひとつは、マンネリズムに陥ることである。ものの見かた、考えかた、判断のしかた、行動のしかたが惰性的、形式的になってしまい、柔軟性が無くなり、創造性を失い、進歩が止まってしまう危険性があるのである。

 組織文化に快さを感じている人々が保守的な心情となってしまうと、異質なものの見かた、考えかた、判断のしかた、行動のしかたを排除したり、組織文化の変容を嫌ったりすることがある。このために、世間の新たな流れに乗ることができず、時代に取り残される恐れが生じる。

 組織のリーダーは、組織文化の定着にはこのような危険性があることを知って、対策を講じることも考えなければならない。組織文化は、時代とともに成長するべきであることを忘れてはならないのである。