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戒・定・慧・解脱
増谷文雄編訳『阿含経典3』ちくま学芸文庫所収の「大いなる死」より
戒・定・慧・解脱の定型句
◇定型句
釈迦牟尼世尊の最後の旅を記した経典「大いなる死」に、「戒・定・慧・解脱」に関する定型句が、8回に渡って出てきます。
定型句は次の通りです。
「これが戒である。これが定である。これが慧である。
戒とともに修せられた定は、その果も大にして、高く評価せられる。
定とともに修せられた慧は、その果も大にして、高く評価せられる。
そして、慧とともに修せられた心は、愛欲のまどわし、生のまどわし、考えのまどわし、無智のまどわしなど、さまざまなまどわしからまったく解脱する」
◇定型句の出てくる箇所
定型句の出ている箇所は次の通りです。
- ラージャガハのギッジャクータ山で(増谷文雄編訳『阿含経典』ちくま学芸文庫、p.315)
- アンバラッティカーの園にある王(浪註:アジャータサッツ王)の園庭で(同、p.321)
- ナーランダーのバーヴァリカ・アンバ林で(同、p.326)
- コーティ村で(同、p.345〜346)
- ナーディカのギンジャカーヴァサタで(同、p.352)
- ヴェーサーリのアンバパーリ(浪註:娼婦アンバパーリ)園で(同、p.362)
- パンダ村で(同、p.406)
- ボーガ城市のアーナンダ廟で(同、p.410)
このほかに、釈迦牟尼世尊は、パンダ村で、「四つの法」として、「戒・定・慧・解脱」の教えを説いておられます(同、p.404〜405)。このときは、定型句ではありません。
戒・定・慧・解脱
◇三学
「これが戒である。これが定である。これが慧である」とあります。
「戒・定・慧」を三学といい、仏道修行者なら必ず修めるべき修行の道です。
◇戒・定・慧
「戒」とは、身業(身の行ない)、口業(言葉の行ない)、意業(心の行ない)を正しくすることです。
「定」とは、大切なことに心を集中することです。
「慧」とは、正しい道を見出す智慧です。
戒・定・慧は一つの修行の道であり、分けて修行するものではありません。しかし、どれかに力を入れるというようなことはできますし現実的だと思います。
◇戒・定・慧の関係
「戒とともに修せられた定は、その果も大にして、高く評価せられる。定とともに修せられた慧は、その果も大にして、高く評価せられる」とあります。
戒の実践によって身業・口業・意業を整えながら、定を実践すれば、定はより深まります。定が深めれば、慧も深まり、豊かになります。
◇解脱
「慧とともに修せられた心は、愛欲のまどわし、生のまどわし、考えのまどわし、無智のまどわしなど、さまざまなまどわしからまったく解脱する」とあります。まどわす(惑わす)とは、考えを乱し、判断を誤らせ、分別を無くさせることです。
「愛欲」とは、強い執着を持って貪る心です。貪欲とも、渇愛とも言います。
「生(しょう)」とは、ここでは、六道輪廻の世界に生まれることです。
「考え」とは、ここでは、自分本位の誤った考え方や、正しい教えを否定するようなことを考え方のことです。
「無智」とは、智慧がないことです。四つの聖諦を理解せず、実践できないことを言います。
「心」は、さまざまな誘惑を受けて、さまざまにまどわされがちですが、慧によって整えられれば、解脱して、いかなる誘惑を受けてもまどわなくなります。
七仏通誡偈
◇七仏通誡偈
ダンマパダに、次の経文があります。
「すべて悪しきことをなさず、善いことを行ない、自己の心を浄めること、これが諸の仏の教えである」(中村 元訳「ブッダの真理のことば 感興のことば」岩波文庫、p.36)
中村 元博士の訳注に、次のようにあります。
「これをむかしから『七仏通誡偈』という。過去七仏がみなこの詩をおしえたもうたというのである。その漢訳文『諸悪莫作 諸善奉行 自浄其意 是諸仏教』は、東アジア諸国にあまねく知られている」(同書、p.105)
◇戒
「すべて悪しきことをなさず(諸悪莫作)、善いことを行ない(諸善奉行)」が、戒の実践です。
ビジネス縁起観では、自分、相手、世間のすべてに好影響をもたらす行為を「善」、そうではないものを「悪」と考えています。
◇定
「自己の心を浄めること(自浄其意)」が定です。
戒を実践すれば、定が深まるのです。
◇慧・解脱
「これが諸の仏の教えである(是諸仏教)」の句は、慧と解脱を表していると受け取ることができます。
「仏」とは「仏陀(Buddha)」すなわち最高の智慧を覚った人です。また、「仏陀」は、戒・定・慧を修習して解脱した人です。諸の仏が教えを説くのは、人々に戒・定・慧の実践を促し、解脱に導くためです。
私たちも、仏に導かれて戒・定・慧を実践すれば、解脱に到ることができます。
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